・愛とは常に、体力を要するものである。



「あ゛ーそーぼーよう!」
「ハイハイ、じゃーんけーん」
「ぽんっ!」
「ハイ流星の勝ち〜、ハイおしまい〜」
「もっと遊んでよぉう!」


夫がこの世を去って三ヶ月になる。
仏壇を買ってやるほどの金もなくて、サイドボードの上にちんまりと位牌と花を並べるしかなかった。


「おれが美久も流星も幸せにするから」


そう言って笑った次の日、奴はトラックと地面の間に埋もれた。
ひしゃげた顔は、私の愛したそれの原型をひとつも留めていなくて、悲しもうにも、吐き気が起こるのみだった。


「もぅいいよ」


口を尖らせて流星は私の背中から退いた。







「りゅうせい」
「なに?」
「…おじいちゃんとおばあちゃんに会いたい?」
「会いたい!」


ヒーローアニメのおもちゃを放り投げて目を輝かせるその顔はあの頃の夫と同じで、少し涙が出そうになった。



・愛とは常に、体力を要するものである。


七年ぶりに電話をかけると母は、しゃくりあげながら この親不孝者 とか ばか娘 とか言って、いつでも帰って来ていいのよ と少し笑った。

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おかあさん、頑張るね
流星の柔らかい金色の髪をなでると、また少し彼を思い出した。