人よりも少し、高く跳べた。
先に立ちはだかる柵を越える時、私は空を仰いでいて、いつも何かが笑いかけてくる気がする。



たちきることの、そのすべて
たち‐き・る
 【立ち切る】
  @炭や油などが、燃え尽きる。
  A立ちつづける。居つづける。また、堪える。やっていく。
 【断ち切る】
  @紙・布などを切りはなす。
  Aつながりを切って関係をなくす。
  B間をさえぎって、つながらないようにする。


今でも悲鳴を思い出す。
ゴツゴツしたアスファルトは痛くて嫌な匂いがした。
黒いネガを掲げ照らして、医者は私に、跳ぶことを禁じた。
翼を失った鳥だとか天使だとか、よく言ったものだ。
最初から私には羽なんてなかったし、ただ、スピードに乗った私のからだをはねあげる膝があっただけ。
次々と明るい声と励ましを持った人間が、片足の人間を見て言う。

『きっとまたいつか、跳べるようになるよ』

聞いて笑った。


ほぅら、見てみろ。
私は今、もっともっと高いところにいるんだ。
わはは、と手を叩いて笑う。   笑うさ。




私の膝が私によこした景色は、そいつを失くしてやっと、より高みに私を導いたのだ。

黄土色をしたこの高い高い病棟を、去年の夏見上げて通ったことを思い出して、私は吠えた。