柔らかな暖房の風に当てられて、指先がピリピリとあたたまってくる。 人間たちは立ったり座ったり喋ったりしながら窓外の景色に目をやっている。 この車両の中はいつも生柔らかい空気と土埃の匂いに満たされていて、目まぐるしく姿を変える外の世界よりもあたしには相応しい気がした。 去年買ったマフラー 少し伸びたセーター 冷たい足元 しびれる指先 車両はまたも人を取り込み、吐き出し、ちゃきんちゃりんと不細工なベルを鳴らして駆ける。 さぁ、はしれオンボロ そいつのビートが響く度、あたしの体はずぶずぶとその柔らかな座席へと赴くままに埋もれていく。 |
セイコウトウテイ
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大阪の下町の一両電車や路面電車がかわいいなあと思って。