「うち、安土になら喰われてもええわ」
「… 嫌だわァこの子ったら、ハレンチ!」
「そういう意味と違くて。 ホントに食べてほしいねん」
「俺は肉食獣とちゃうで」



さよなら,愛すべき人喰いジャスティス。


「マジメな話しやねんけど」


あたしが言うと安土は少しだけ本気の顔をした。
安土は本当に整った顔をしていて、誰にも真似出来ないような強い眉間と、負けん気だけで出来てしまったような目の、それらすべてが愛おしい。


「何かあったん?」
「安土に、喰ってもろたら。 うちらもう離れんでええやんか」


中学入ってから今まで、高校3年生になっても同じクラスだなんて。 うちらにはきっと何かがあるねんよ。
そう思って、願って、いつ恵まれるか救われるかと思ってここまできた。

今更何もないなんて言われたら。きっともっと私には何もなくなる。


「佐倉」
「なんや」
「今の俺には、ユカリしか愛されへん」

「、ゴメンな」
「お前なんか大嫌いや」


安土の、大きな手が伸びて私の髪を少し撫ぜた。
ああ、これが、自分のものだったらなあ。 救われたい。


「もぅうち、ずっと安土と一緒におることしか考えられへん…」


何度も何度も、願って泣いたのだ。
愛されたい、救われたい、恵まれたい二人でずっと。



手を伸ばして安土の唇をなぞると、そいつは私の指を喰った。